会報

【連載】介護家族をささえる (2018年10月会報より)

<つどい>

私は代表交代とともに、“つどい”の司会進行も務めることとなった。受付は発足から関わってきた古株の世話人さんが担当する。ずっと会を支えてきた人が、受付にドンと座っていることはとても大事だ。何より常連さんが安心される。新しいスタッフが増えたからといって、古株の世話人さんが活動から一歩ひかれることがないように、必ず受付をお願いした。

認知症の人や介護家族が集まる場は他ではまったくと言っていいほどなかったので、“つどい”のお知らせが新聞に載ると、県下各地から参加者があった。しかし「新聞に載る=人がくる」という条件付きだ。どうしたら参加者が多くなるのか、継続してもらえるのか、“つどい”の開催方法についてはいろいろとチャレンジしてみた。他で認知症の学習をする機会が少ないためか、講師を呼ぶと参加者も多く、40人近くになり、会場いっぱいになるときもたびたびあった。

しかし、講師を呼ぶとそれで1時間ほどかかるので、後の交流会が簡単な自己紹介だけで時間がきてしまい、掘り下げた話ができない。そうなると、参加された人はもちろんだが、こちらも不完全燃焼になる。何とかならないかと思い、次は講師を呼ばないで交流会だけにしてみた。

すると、参加者が少ない。でも話は充分できる。交流会だけだと、今度は専門家の話が聞きたいから来たのにという人が出てくる。どっちもどっちで難しい。“つどい”で何より参考になるのは、他の介護者の日々の様子だが、最初来る人はそんなことは分からないので、どうしても医師などの話を聞きたがる。日常生活の悩みについて「どうしたらいいでしょう?」と医師に尋ねる。医師に普段の生活のことを聞いても分からないということが、分かっていない。

交流会に参加するたびに、「専門家、専門家」と言い続けていた男性介護者がいた。1年経ったら、知らない間に「みなさんの話が一番参考になります」と、彼の言うことが変わってきた。普段の生活の場面でのことは、介護家族のほうが良く知っているのだが、介護家族はなかなか専門家として見てもらえないのだ。

交流会を続けながらずっと気になっていたのは、介護したことのない人が参加すると「気の毒に」「うちは認知症でないからいい」など、介護家族の気持ちを逆なでするような発言があることだ。また、専門職の人は、やたらと教えたがり、交流会に水を差してしまうことがたびたびある。参加者が傷つかないようフォローは入れるが、進行している側からすると、ようやく本音を引き出せるかな…と思っているところに水差し発言があったりするので、結構、邪魔になる。

そのため、“つどい”の参加者は介護家族に限定した。はじめは「どなたでもいいですよ」と言っていたが、興味本位の人や勉強したい人のために“つどい”をやっているわけではないので、途中から介護家族の人に参加を限ったのである(ただし、会員は誰でもOK)。新聞を見たという問い合わせがあると、「介護していらっしゃいますか?」と聞く。「いいえ」であれば、「ごめんなさいね。介護家族だけなんですよ」と断っている。このように言うようになったのは、講演会や、研修会など別の機会を通して、介護していない人にも学習の機会を提供できるようになってからのことではあるが。

これまでたくさんの人が愛知県支部の“つどい”に参加してくださった。常連さんも多いが、ただその一方で、一見さんで、1.2回で終わりという人がとても多い。これはおそらくどこの交流会も似たような状況である。なぜ参加してくれないのかと思うかもしれないが、逆にそんなものなのである。介護しているとあれこれあるので、“つどい”に毎回出てくるだけの力は、そうそう残っていない。でも1回でも参加してもらえれば、自分だけでなかったと思ってもらえるので、何かしら得て帰っていただくことはできる。

何度か参加していくうちに、“つどい”の参加者や担当者との関係性がある程度できてくれば逆に常連さんになっていただける。しかし、たった2時間半(13:30~16:00)で常連さんになっていただくまでのつながりをつくることはそう簡単には出来ない。だからこそ、参加されたときに誠意をもって聞いてあげることができれば、それがなにより大事なことなのではと思う。1年ぶり2年ぶり、なかには10年ぶりに来ましたという人もあるので、私たちの役割は、“つどい”を欠かさず開いて、困った時にはいつでも出かけてきていただける体制を続けることである。

今思うと、凄いなあと思うことがある。それは、前代表はじめ、これまで会を支えてこられた世話人さんが、私に「ああだ、こうだ」と一切文句をつけなかったことだ。「良くやる、良くやる」と上手におだてて褒めながら使ってくれた。「私たちの育てた子どものようなものだから」といって、今も変わらず支えてくれている。自由にやらせてもらえたことで、伸び伸びと自由な発想で取り組むことができた。だからこそ、ここまで愛知県支部は大きくなれたと思う。

<介護家族リフレッシュ旅行>

まだ私が愛知県支部の代表になる前のことである。「今度、日帰りで農業センターに行くから行かない?おじいちゃんはボランティアさんが看てくれるから大丈夫よ」と声をかけていただき、私にとっても、家族の会にとっても、初めての日帰り旅行が開催された。

せっかく声をかけてもらったので、エイヤーと旅行に出かけることにした。すでに義母は他界しており、デイサービスも慣れてきた頃だった。おじいちゃんと、夫と子ども4人、一番下はまだ3歳だった。義父は足元が少しふらついていたので、車いすに乗せて、名鉄電車で集合場所の金山駅へ。そこからバスで名古屋市内の農業センターへ行き、1日を過ごした。この時に、忘れられない出来事が起こった。

その頃の私は、義父の世話はどちらかと言うとそれほど前向きにやれていたわけではない。旅行に連れて出かけたのは、ちょっといい嫁を演じたかったからかもしれない。看護師さんがボランティアで1日ずっと義父についてくれたので、私は子どもの世話だけしていればよく、本当に助かった。あっという間に1日が過ぎ、バスでまた金山駅に戻った。

「え!」
去って行くバスの後姿に、手を合わせ、涙を流しながら見送っている義父の姿が目に飛び込んできた。よほどに嬉しかったのだろう。本当に驚いた。

今まで私は義父の何を見てきたのだろうか。涙が出てきた。その時「私はこの人を最期まで看れる」と確信した。でも残念なことにその3ケ月後、義父は他界した。認知症の介護は、やはり大変だ。でも介護は親が子どもに残す最後の財産なのかもしれない。大事なことを気づかせるために、介護が与えられたのかなあと感じている。

代表を交代して2年目から、愛知県支部のリフレッシュ旅行は、毎年の恒例行事となった。最初の2年間だけは日帰り(昼食会)で行い、平成11年からは一泊の温泉旅行が定番となった。バス1台、40人前後の参加である。同伴も可能なので毎回5~6人はご本人の参加もある(その場合はボランティアさんが担当として入る)。愛知県支部の旅行は旅館も料理もよく豪華版で好評である。

企画のコツは、通常の日帰りコースを1泊に作っていくこと。ドライブインのトイレ休憩も25分程度は確保するなど、ずいぶんゆったりだ。最近はウインナーづくりやワサビ漬け作りなど体験できるようなものも組み込んでいる。簡保旅行で日頃から計画は作り慣れているので、お手のものである。何も経験がないと、企画実施までにはとんでもなく負担は大きくなるであろう。そう考えると、恒例行事として、何なく取り組めたのも、仕事の経験のお陰である。

とはいえ、認知症の介護をしていると何が起こるか分からないので、旅行直前まで参加者の出入りがあり、名簿・ボランティアの担当決め・部屋割りなどは、出かけるまでに毎回3回は作り直しが必要である。「えっ!また変更!(怒)」と思っていては家族の会の旅行など担当できない。ここでも「そんなもの」という開き直りが大切だ。

「ねえねえ、貴方のお母さん歌っているよ」
「え!!」  舞台にはマイクを手にした実母の姿。
「お母さん歌えるんだ、あんな声してるんだ、初めて聞いた」ボロボロと娘さんの目から涙がこぼれてきた。一人暮らしの母、仕事帰りに毎日通いの介護。認知症の初期で格闘中。明日からちょっぴり娘さんの介護が変わるかもしれないなと感じた、そんなひとコマだった。    (つづく)

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