会報

【連載】介護家族をささえる (2019年6月会報より)

<全国研究集会をやろう!>

実は、初めての講演会は場当たり的にやったわけではなく、代表を交代した時に、目標をつくっておいたものの一つ、通過点でもあった。家族の会に参加し始めた初心者の頃、呆け老人をかかえる家族の会は全国組織なので、介護に関わっている人は当然、皆知っていると思っていた。ところが誰も知らなかった。それどころか「家族の会」というと、変な宗教団体と誤解されてしまうこともあった。

知名度がなければ、当然会員も増えないし、何よりも介護で困っている介護家族に情報が伝わらない。とにかく会のことを知ってもらいたい。「呆け老人をかかえる家族の会をご存知ですか」と聞いたら「はい」と返事が返ってくるようにしたい。そのためにも、きりのいい2000年、愛知県支部発足20年、この年に愛知で全国研究集会(全研)を開こうと密かに考えていた。全研が開催できるくらいになると、支部活動にも随分力が出てくるし、より多くの人に活動を知ってもらえるようになる。

ただ、全く経験がないところで急に全国大会をやろうとすると、それはとても大変だ。全研は、本部や他県支部の皆さんが関係してくるので、大会当日だけでなく、前日の会議や宿泊が絡んでくる。そこで少しずつノウハウを蓄積できるようにと計画を進めていった。

平成10年には、講演会と「痴呆介護セミナー」を開催した。この時の講演会では「おはようから、おはようまで」と題して、嫁・娘・息子・夫・妻と様々な立場で介護している方々に介護体験を話してもらった。一般の方が介護体験を聞く機会はほとんどなかったので、とても斬新的な取り組みであった。平成11年は家族の会のブロック会を受けた。全国の支部が一堂に会する機会は2回、総会・代議員会だが、これだけでは細かな情報交換ができないので、全国の支部を分割して、ブロック会を開催している。ブロック会は2日間にわたり実施するので、他県支部との関わりや宿泊が伴うというところでは、全研のミニ予行演習にもなる。そんなことで、いよいよ平成12年全国大会開催の年となった。

全国研究集会は愛知県支部の活動の柱ともいえる、介護者の心のケアをテーマにした。テーマは「受け止めて!!わたしのこころ~痴呆介護・介護保険にまつわる人権~」である。プログラムは祖父江文宏氏による基調講演、介護を題材にした朗読劇、介護家族からの報告、医師の松本一生先生と支部世話人・理事の勝田登志子さんの報告、三宅貴夫副代表理事より特別報告、そして全体討論という内容である。

全国研究集会では、毎年テーマにそった報告を公募する。この時の公募は、介護者の心をテーマにしていただけに、これまでにない公募数で介護体験が多く寄せられた。この時に選考したのが、今は家族の会で知らない人はいない松本一生先生だ。先生にとって、この時が家族の会との初めての出会いである。また、介護を題材にした朗読劇の舞台はさおり織で装飾し、舞台裏にはプロが入って、音響・照明も駆使しながらの演出をした。とても素人の寄り集まりの役者とは見えなかったことだろう。

この時、私は本業の仕事が忙しくなり、とにかく寝る時間がなくなっていた。風邪も治らないし、咳も止まらない。病院に行く時間がないだろうと、全研の直前は知り合いの医師が往診で点滴を打ってくれた。参加申し込みが多く、締切最終日の振り込みの方100人には参加費を返却するという事態にもなり、直前まで大騒動だった。

家族の会本部首脳陣のみなさんは、あまりに「斬新な」プログラムに、今日はとんでもない全研になるのではないか、大丈夫なのかと冷や冷やされていたようだった。でも大丈夫。見事な仕上がりだった。「受け止めて!!わたしのこころ」、参加者の心に残る素晴らしい全国研究集会であった。

<痴呆介護セミナー開催>

愛知県支部では、平成10年に初めて痴呆介護セミナーを開催している。介護保険導入前で介護の話題は多く出ていたが、この頃の痴呆の講演会や勉強会は痴呆という病気のことばかりで、介護家族の苦労は全く眼中に入っていないものばかりだった。なぜこんなに介護者のことは置き去りにされているのか。もっと現場の人たちに、介護家族のことを知ってもらいたい、介護者の視点から見た痴呆介護の勉強会を開きたい、そして活動費も捻出したいということで始めたのが、このセミナーである。

セミナーの第一回目は、介護者のこともお話いただける杉山孝博先生にお願いした。全国各地の支部では、数年前から杉山講座が開催されている。愛知では、2回目以降は自分たちで企画し実施していくという活動となった。ちなみに平成14年の講座の内容は以下の通りである。全国研究集会でもそうであったが、今内容をみると、現在問題になってきていることを早くから取り組んできた、と感じている。


痴呆介護の今日(いま)痴呆介護の明日(あした)
10:00~16:00 1日3000円(会員2500円)、2日5000円

1日目  <薬にたよらないかかわり方>
薬にたよらない関わり方・・・宮治 眞(医師)
ビデオ・・・呆け放談①
音楽療法・・都築彩子(音楽療法士)
回想法・・・来島修志(作業療法士)
ディスカッション・コーディネーター 山崎等(ケアマネジャー)

2日目  <介護家族の苦悩と現状とサポート>
介護殺人から見る介護者の心理・・・ 加藤悦子(日本福祉大学)
ビデオ・・・呆け放談②
介護家族の現状について・・・永島光枝(千葉県支部)
痴呆症へのサポートのあり方・・・恒川 千尋(ケアマネジャー)
介護者支援がおよぼす効果・・・益田雄一郎(医師)
ディスカッション・コーディネーター 渡辺従子(施設職員)


(注:平成14年の講座の内容です)

セミナーは参加者150名を目標に実施したが、1日だけの単独開催では、講師料・会場費・PRチラシ、郵送代等、必要経費を差し引くと、ほとんど収益は残らない。せいぜい5~6万。講座実施にかかる人件費分を考えると完全に赤字だ。

そこで2日間の連続講座にした。募集が一度にできることと2日間連続受講もあり、PRにかかる費用や、開催のための運営費も1度でいいので効率的だ。それでやっと30万程度の収入となった。その収入を電話相談スタッフ交通費に充てるなどして、会費だけでは足りない活動費のやりくりをしていった。 (つづく)

 


 

2012年3月に中央法規から出版した著書「介護家族をささえる」より、愛知県支部の活動の歴史を連載します。

但し残念ながら尾之内が会に参加し始めて(平成6年頃)からのお話しですので、1980年8月31日に発足してから先代の皆さまが頑張ってこられた15年間の歴史についてお伝え出来ませんことご了承くださいませ。

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