会報

【連載】介護家族をささえる (2019年12月会報より)

<レベルアップ研修>

電話相談の養成講座を3年間継続し、相談員の人数も増えたので、平成14年、電話相談の養成講座をお休みすることになった。月1回で半年間、講座を行なっていたので、その時間は暇となる。暇になった分、有効に活用したい。何か代わりの講座が出来ないかと考えた。もちろん、資金作りにも貢献できるようなものがいい。その時に頭に浮かんだのが、専門職は介護家族のことは眼中にないし、わかってもらえていない、ということだ。それはある面仕方がない。ケアマネジャーの資格を取るときにも、介護福祉士も社会福祉士も、介護する介護家族の支援はカリキュラムにほとんど入っていないのだ。学生が卒論を書くために家族の会のことを聞きに来るが、「介護家族のことは学校では教えてもらえない。初めて聞くことばかりです。介護家族への支援が大事ってよくわかりました。」と言って帰っていく。

初期の頃に関わってもらっていたある会員さん、彼女は若年性認知症のお母さんを介護していた。毎日腹の立つことだらけ、どうしても怒ってしまう。そんなある日、「何で、デイサービスの人は、うちの憎たらしい母にあんなに優しくできるのか?きっと、何か“技”があるにちがいない」と考え、デイサービスでパートとして働くことにした。数週間して気がついた。「さよなら、また来てね」、自分が満面の笑顔で手を振っているのは、帰っていく利用者に対してだけだ、お迎えに来た人のことはまったく眼中に入っていなかったと。立場が変われば見えないことが多い。彼女の結論は、“技”は身内と他人の違いだった。

そんな話もあり、半年間の電話相談向けのカリキュラムを専門職用に組み換えて作ったのが専門職向け「レベルアップ研修」である。月1回、半年間、同じメンバーに連続受講してもらう。また、連続受講でお互いが後々まで情報交換出来る仲間を見つけられる場にもなればと考えた。最後に1泊2日の宿泊研修もあり、とても充実した内容になった。人数40人、受講料は2万円とした。講師もそうそうたるメンバーである。最初の頃は、まだ認知症が今ほど取り上げられていなかったこともあり、自腹をきって学ぼうという受講生が多かった。現在は、事業所が研修として受講料を出してくれるところが多くなってきている。運営的にも一度に80万円の収入になる。私たちが講座に関わる人件費を換算すると儲けはないかもしれないが、そこはボランティアなので、定員が集まれば、実質3分の1くらいは利益として残り、活動費が捻出できたので、実施によるメリットは大きかった。

家族の会にとって、このレベルアップ研修が活動費捻出どころではない、重要な意味合いを持っていたことが、徐々にその後の活動の中で明らかになっていった。

<支援者層づくり>

レベルアップ研修を半年としたことには、もう一つ大きな意味合いがある。講演会や単独のセミナーでは、その日、その時だけのつきあいで終わってしまう。家族の会が主催してやっていますよ、家族の会がありますよというPRにはなるが、家族の会の細かいところまではわからない。しかし、レベルアップ研修で半年じっくりおつきあいさせていただくなかで、深く私たちの活動を知ってもらうことができる。私たちが怪しい者でなく、一生懸命頑張っていることもそれなりに理解してもらえる。「家族の会??なんか変な宗教団体じゃないの?」なんていう人があっても、「大丈夫だよ。ちゃんとした所だよ」と言ってもらえる。「電話相談や交流会もやっているから行ってみたら」と声もかけてくれる。受講者には、家族の会の口コミ層としても活躍していただける。家族の会の活動のファンになってくれた人もたくさんいた。

私たちが単独でつながれる介護家族の数はたかが知れている。それが、受講者を介して、困っている介護家族につながっていくことができるのだ。受講者が知らず知らずのうちに目に見えないネットワークを作ってくれる。講座を重ねるごとにその人数は増えていき、ありがたいことに潜在的な支援者層ができて、家族の会の活動を支える新たな柱ができた。人材育成は本当に大切なことだと実感している。

第一期生の講座実施中から考えていたことがある。介護する側の心のケアの問題だ。認知症の介護は、介護する側が元気でなければいい介護はできない。それは介護家族であっても専門職であっても同じことではないか。専門職だって苦しい時がいっぱいあるだろう。私たち介護家族には交流会がある。同じように専門職同士の交流の場も必要ではないか、と。しかし、それは私たち介護家族側が作るのではなく、専門職同士が自ら作ることが大切だ。ということで、講座の最終日に、受講者にこの思いを投げかけて見ようと思った。本当に熱心で、素敵な人たちなのだ。これだけの人材が受講を終わって解散してしまうのはとてももったいない。せっかく知り合えたのにという気持ちもあった。

講座最終日、有志で交流の場づくりを目指すこととなった。まずは1年後の「介護する側の心のケア」をテーマにした講演会を目標に、毎月1回打ち合わせ会の開催が決まった。私の頭のなかでは、皆さんで協力しながら、1年かけて啓発講演会を開催できるといいなと思っていた。その間に、いろんなことも話し合うことができる。それを足がかりに、月1回の専門職交流会につなげていけないかと。そのための下準備として、講演会を提案できるよう、内々で会場を予約しておいた。大きな会場は1年前の予約なので、前もって取っておかないと希望の日が取れなくなってしまう。予定通りというか、企画に乗ってもらったというか、講演会開催に向けて動き出すこととなった。

講演会は内容も大事だが、テーマも大切である。どんな名前を付けるのかで集客に大きく影響する。介護現場で働く人に向けたメッセージは何がいいのか?打ち合わせ初日に、皆といろんな案を出し合いながら考えた。決まったのが、「もう頑張れない!そんなあなたへ ~置き去りにされている介護スタッフの心のケア~」。結構、いけてる。これまで介護スタッフに向けた講演会はなかったので、インパクトと目新しさで反響が良く、参加費3000円にもかかわらずあっという間に500人近い申し込みがあり、最終的には700人近い参加となった。

 


 

2012年3月に中央法規から出版した著書「介護家族をささえる」より、愛知県支部の活動の歴史を連載します。

但し残念ながら尾之内が会に参加し始めて(平成6年頃)からのお話しですので、1980年8月31日に発足してから先代の皆さまが頑張ってこられた15年間の歴史についてお伝え出来ませんことご了承くださいませ。

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