会報

【連載】介護家族をささえる (2020年4月会報より)

<助成金の申請>

家族支援プログラム、これはいい!と思っても、会場費や講師料などの経費がかかる。愛知県支部の予算内で実施できる講座はせいぜい年2回だ。資金がもう少しあれば、他のところでも実施できるのに。せっかく立ちあがった研究班も、1回の受講者数が15人~20人では人数が少なく、効果測定には程遠い。そこで、助成金を申請することにした。例のごとく、毎夜、インターネットで助成金探しの日々だ。

パソコンに向かっているとあっという間に3、4時間は過ぎてしまうので、募集要項がフィットする助成金探しは1~2週間くらいかかってしまう。どうせなら数か所で家族支援プログラムが開催できるよう、100万円以上の大きな金額のものを探した。多数申請してやっと一つ通ればいいというのが助成金である。いくつも申請してみるので、少しずつ内容を変えておかないと、万が一(本当に万が一だが)重なって通ると困るので、そのあたりもコツがある。

あった、あった! 福祉医療機構、上限500万円 。申し込み締切は平成15年10月31日、あと少しだ。早速に書き始めたが、金額が大きいだけにたくさんの書類が必要だった。こんなに大きい助成金にチャレンジするのは初めてなので、作成にはとても時間がかかった。事業名は「在宅高齢者の介護者に対する支援プログラムの実践およびその効果に関する研究」。愛知県以外でもこの講座が有効なのかどうかを検証するという内容で提出した。結果は3月。
3月末、封筒が届いた。あれ?ちょっと厚い…。「内定通知書」だった。「やったあ!500万円」、なんと助成金がいただけることとなった。だが幸か不幸か、この後とんでもない事態が待ち受けていた。

<もう一つの助成金 その1>

この1年前、平成14年からグループホームの外部評価が始まった。グループホームに調査に出かけて、様々な角度からその質の評価をするものだ。この時はモデル的なものだったので、参加するなら調査員を出してほしいという連絡が入った。
介護施設の質は、利用する側にとっては大きな問題である。少しでも関わっておいたほうがいいのではないかと思い、2日間、滋賀県で実施された研修に、電話相談スタッフの中から二人に受講してもらった。2日間なので、自由に家を空けられる人でないと難しい。働いていたり、家のことで都合がつかなかったり、行ける人を見つけるのは大変だったが何とか探し出し、無理をお願いして出かけていただいた。

グループホームは介護保険導入の平成12年頃からでき始め、1年ごとにその数は倍増し、平成15年8月には、県内のグループホームは274件に達していた。外部評価も最初は、県社協が暫定的に研修を受けた調査員を派遣し、評価を実施していた。
平成17年4月からは各都道府県が認定した調査機関が外部評価を行うことになった。愛知県の場合はグループホームの数が多いので、手あげ方式で調査機関を募集する。
「家族の会は外部評価やらないの?」「う~ん、利用する側の視点は大事なので、ちょっと考えている」、平成15年秋頃だったと思うが、面識のあったあるグループホームの管理者から聞かれて、そう答えた。やったほうがいいのかなと思いながら、全くノウハウがないので、考えているとは言ったものの、雲をつかむような話でもあった。

「やるんだったら、僕も関わらせてくれないかなあ」と言われた。彼はグループホームに関して、経験と知識を持っていた。内容に詳しくてやりたい人がいるなら何とかできるかなと、それほど深くも考えず、「いいよ」と答えておいた。一方で、連日夜中まで家族の会の雑務をこなしている現状にボランティア活動だけで運営していくことの限界を感じ、有給の常勤事務職員の必要性とその資金の捻出に苦慮していた。レベルアップ講座もやり始めたところであるが、講座実施のための人件費だけはなんとか賄えても、家族の会の活動を維持するための収益まではとうてい無理だ。会費も5000円がそのまま収入になるのであればやっていけるが、2000円では…。

講座は人が来なければ、赤字になる恐れもある。そんな場当たり的な収入でなく、確実に継続して安定した収入になるものが、何か必要なのだ。どうすればいいのだろう、そう考えていた矢先に、外部評価の話がふってきた。ひょっとしたら何とかできるのかもしれない。しかし、外部評価をやるとしたら、家族の会の活動としては行えない。家族の会には、ボランティアでお互いに支えあい助け合うという目的がある。一方、外部評価はサービスの質の向上が目的のため、間接的には介護家族の支援にはなるが、あくまでも会の活動を側面から応援する事業となる。資金繰りや雇用といったことが出てくるため、会費運営が基本となる家族の会の活動にはなじまない。会計を分離させ、家族の会は家族の会として、活動を明確化しておくことが、ボランティア団体としての家族の会の存在意義を示すことにもなる。事業にはリスクも伴うので、家族の会が巻き込まれないためにも、活動には線引きが必要となってくる。

そのため、NPOを立ち上げて、側面的な支援を行える体制を整えようと考えた。とはいえ、実際に動き出しているわけではないので、どうもはっきり先が見えなかった。どうにかしないといけない事だけは確かだが…。内部での話し合いも進めながらも、本当にそれでいいのだろうか、とずっと模索しながらであった。そんなことを考えながら助成金を探していたら、経済産業省による「ベンチャー事業の立ち上げ」が見つかった。上限700万円。家族の会の活動を支えるためのNPOを立ち上げて外部評価を行うという、今やろうとしている内容をそのまま申請できそうだ。これで立ち上げの資金もできる。ダメもとで出してみることにした。

初めての書式と内容なので、何度も書き直して1ケ月以上かかって仕上げた。最後の最後になって、外部評価は全国的に始まるので、それだけでは少し内容が弱いのではないかと思い、急遽ここに家族支援プログラムの事業化も盛り込んだ。家族支援プログラムを各地で実施するためにはどのような形で行政や福祉関係機関と連携するといいのかを検証し、各地で実施できるように展開していくという内容だ。ただこの助成金、最後は50ページ以上の報告書の提出が義務付けられている。まあ、その時はその時だ。そう簡単に取れるわけがないのだから。上限いっぱいはさすがに金額が多くて大変なので、少し遠慮して600万程度にして申請した。もしこれを獲得できれば、外部評価も確実に進めることができる。
この時、県から評価機関の認定を受けることがどれだけ時間がかかり大変なのかは全く考えてもいなかった、というより知らなかった。そしてこの助成金がどんなに大変なものなのかも…


 

2012年3月に中央法規から出版した著書「介護家族をささえる」より、愛知県支部の活動の歴史を連載します。

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