会報

病院の相談窓口から (2020年 8月会報より)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
医療福祉相談室(精神保健福祉士)
高見 雅代 

認知症が重度になった時の相談

暑い日が続いておりますが、皆様お元気にお過ごしでしょうか?熱中症に注意が必要な時期になりました。今回は、「認知症が重度」になった時のことを書いていこうと思います。

認知症の重症度は、何をもって評価するのでしょうか?医療機関や生活支援機関では、その機関の果たす目的や役割にあわせてスケール(尺度)を使用しています。皆様がよくご存じのものでは「改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)」や「ミニメンタルステート検査(MMSE・現在は日本版のMMSE-Jが開発されています)」があります。これは、記憶や見当識、計算などの、「認知機能の程度」をはかるために使用されます。

また、「臨床認知症尺度(CDR:Clinical Dementia Rating)」というものもあります。これは、認知症の「症状」を記憶、見当識、判断力と問題解決、社会適応、家族状況および趣味・関心、介護状況の6項目について、5段階で重症度を評価し総合して判定するものです。この「CDR」をもとに「認知症が重度」である状態を「身の回りの生活と、記憶や場所、時間についても、助けが必要になる時期」としてお話をいたします。

この時期のご相談は、主に次のようなものがあります。
①認知症の進行による症状を、治療でコントロールできるか:夜中に起きて動き回っている、目を離すと外に出て行ってしまう、頻回にトイレに行く、トイレに間に合わない、など。
②行動・心理症状(BPSD)や激しい精神症状の治療ができるか:すごく怒るようになった、家族や近所の人を悪者扱いして文句を言う、身の回りのことを手伝おうとすると嫌がって手を出せない、「家に帰る」と言って落ち着かない、など。
③認知症の進行に伴う体の病気が出てきた:嚥下(呑み込み)機能の低下、肺炎、食事の量が減った(食べない、食べられない)、足腰の衰え、など。
④認知症とは別の病気の治療をどうしたらよいか:心臓の病気、肝臓や胃などの消化器の病気、悪性の病気など。

診断や認知症治療薬の開始をする「初期」の時期に比べると、「認知症」への直接的な支援者は、医療機関から福祉や介護の支援機関、専門職に移行をし、医療機関はそれに連携して関わる時期になってきます。そして、医療機関の新たな役割として、体の心配事への相談や対応が出てきます。この時期には、ご本人やご家族の方に加えて、ケアマネジャーさんや介護施設の相談員さん、地域包括支援センターの専門職の方からもいろいろなご相談をうかがうようになります。当院に通院されている方も、診察にケアマネジャーさんが同席されることも少なくありません。

認知症の症状のために、「ご自宅での生活が大変になってきたので介護施設への入所を提案したい」「症状が激しくて、介護サービスでの対応が難しい」などのご相談を伺います。この時期は、さまざまな社会資源を上手に利用しながら、ご本人とご家族それぞれがそれぞれの生活を営んでいけるように考えることが重要です。薬での治療ばかりでなく、環境づくりや関わりが大切、と言われてはいますが、症状のためにご本人が必要なケアを受けることができなかったり、適切な環境を整備するための資源が実在しなかったりということも少なくありません。それぞれの状況や気持ちにあった方法がとれるように、「生活」と「介護」と「治療」がうまくバランスをとっていけるよう、ご家族、支援者、医療者がみんなで考えることが必要です。

また、ご本人が自身の症状を表現しにくくなってくるので、医療者や介護者がご本人の体の変調に気づいて対応ができる環境づくりも必要になってきます。「これから必要なのは、体を診てもらえる先生なのだ、と思った」とおっしゃったご家族の方がお見えになりました。認知症の病気と症状を専門に診る先生への通院に加え、体のことを相談できる先生、できればかかりつけの先生を見つけていくことがおすすめです。

どうしたらよいかお困りの際には、ぜひご相談ください。

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