会報

【新連載】住み慣れた地域で暮らし続けるために~上手な在宅医療の使い方~(2022年4月会報より)

Dr.N

あいち診療所 野並 院長 野村 秀樹

 皆さん初めまして。私は名古屋市内のクリニックで内科の外来と在宅医療(訪問診療)をしております。医学が進歩して様々な病気が治せるようになりましたが、未だに(おそらく永遠に)絶対に避けられないものに「死」があります。「治る見込みがない病気」になって残された時間が少なくなった場合、半数以上の方々が自宅で過ごし、できれば最期を迎えたいと考えていますが、実際に実現できている方は5人にひとりもありません。この理由のひとつとして在宅医療という言葉は良く知られるようになった一方で、実際の在宅医療はどのようなものかが十分に知られていないこともあると思います。主に訪問診療(往診)を中心に、在宅医療とはどのように行われているのか、どのような工夫をするとよいのか等、特に認知症が進行して病院への通院など外出が難しくなった場合を想定して、今回から六回にわたってご紹介したいと思います。これから1年間よろしくお付き合いください。

第一回 在宅医療とは何?誰が受けられるの?在宅医療の特徴は?

【在宅医療とは何?】広い意味では病院以外で行われる医療です。ですから外来で処方された薬を自宅で飲む事も在宅医療の一つですね。ただし、このシリーズではもう少し狭い意味で自宅に医師や看護師等が訪問して行う医療のことを言います。実際には医師や看護師だけの訪問で在宅医療が完結する事はまずないので、ケアマネジャーやヘルパー等様々な職種が関わって在宅医療を行っています。

【在宅医療の対象は誰?】皆さんもメディア等で在宅医療や訪問診療の場面を目にしたことがあるかと思います。そこではどのような患者さんが在宅医療を受けていますか?寝たきりの高齢の方?進行した癌の方?人工呼吸器など医療機器をつけた方?もちろんそのような重い病気や障害の方への訪問診療も行いますが、もっと幅広い方々が利用できます。医療保険制度上は在宅医療の対象者は①自宅(一部の施設等も含む)で療養を行っている②病気等のために通院が困難な方が対象となります。認知症の方の中には足腰はしっかりしていても、自分一人では決められた日時に決められた病院へ受診できない方やそもそも自分が病気であるということを理解できない場合もあり、訪問診療を利用する方もあります。

【在宅医療の特徴は?】上述した様に在宅医療は自宅で行われる医療であるということが、病院(特に入院)医療との大きな違いです。しかしそれ以外にも特徴というべきものがあります。それは在宅医療は「治し支える医療」であることです。入院医療は基本的に「治す医療」であり、「治す医療」のゴールは病気の治癒・生命の延長と目的が明確です。その目的達成に向け効果的な方策をとるために、ある意味画一的な治療が行われます。では、「治し支える医療」とは何でしょうか?支えるとはその人の想いや生活を支えるということです。治せるものは治す(そのために入院治療が望ましいと考えれば入院先を探す)。しかし、治りきらない病気や認知症のように進行が避けられない病気の場合は、その病気とどう折り合いをつけて過ごしてゆくのか、ご本人・ご家族の意思も尊重しながら生活を支えてゆくことです。一方で在宅医療が苦手な面もあります。それは、検査や治療環境が病院ほど整ってはいないことです。そのため、病院と同じようにいろいろ検査をしてほしいとかいろいろな治療を試してほしいというのは難しいことがあります。
このような在宅医療の特徴を踏まえて、通院(入院)するのか?在宅医療に入るのかを考えていただければと思います。

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