【連載②】住み慣れた地域で暮らし続けるために~上手な在宅医療の使い方~(2022年6月会報より)

2022.08.10会報

Dr.N

あいち診療所 野並 院長 野村 秀樹

第二回 実際の訪問診療(往診)はどのように行われるのか? (前半)

【訪問診療と往診の違い】
今回は訪問診療(往診)が実際にどのように行われているかをお話します。まず最初に訪問診療と往診の違いについてお話します。医師が自宅に訪問して診察をすることはどちらも同じです。一般の方は、ひとくくりにして往診と呼ぶことが多いように思いますが、実はこれらは明確に区別されています。訪問診療は定期的・計画的に自宅を訪問して診療することです。通院でいえば、高血圧の治療のために毎月1回通院することに相当します。一方、往診は急な病状の変化に対して、臨時に自宅で診察を行うことです。風邪等体調不良で予定外に受診することに相当します。訪問診療で普段の体調をできるだけ整えて、具合が悪くなった時には往診で対処して、必要ならば時々入院が、基本的な利用方法になります。

【時間外対応の違いによって 医療機関には2つの種類がある】
往診を行っている医療機関には、大きく二つのタイプがあることを知っておきましょう。
1. 夜間・休日も含め24時間365日必要ならば往診する医療機関
在宅療養支援診療所(在支診)あるいは在宅療養支援病院(在支病)といわれ24時間対応が必須となっています。
2. それ以外の医療機関
夜間・休日など診療時間以外は対応しないところもあります。実際には医師の都合がつけば夜間・休日でも往診してくれるところも多いようです。病気が重い場合や自宅での看取りを考えている場合は在支診・在支病に依頼する方が良いでしょう。

【訪問診療(往診)の実際】
医師によって若干の違いがありますが、基本的には毎月1から2回訪問診療をします。病状が重ければさらに頻回に訪問することもあります。自宅で診察をして薬を処方します。薬は院内処方ならば医療機関から届きますし、院外処方では調剤薬局で調剤してもらいます。なお、医師の指示があれば調剤薬局から薬を自宅へ届けてもらうことも可能です。自宅でもある程度の検査は可能です。血液や尿といった検査については自宅で検体をとれるので比較的簡単にできます。一部の医療機関ではその場で結果が分かるように小型測定器を持っているところもあります。心電図・超音波(エコー)・レントゲン検査の機械も自宅で使えるものがありますが、機械の価格や性能面からまだあまり普及はしていません。胃カメラなど内視鏡検査を自宅で行う先生は稀です。
注射や点滴については、脱水時の点滴や抗生剤の点滴については自宅で受けられることが多いです(場合によっては看護師が行います)。診療所に通院して受けられる医療とかなり近い医療を受けられることがわかると思います。

【具合が悪くなった時はどうすればよいか?】
まず、利用している訪問看護ステーションや医療機関に電話で連絡をします。在支診・在支病の場合は夜間・休日でも可能な連絡先がありますのでそこに連絡をします。お話を伺って重症度や緊急性を判断して、いつ往診をするのかなどを決めます。具体的には、自宅の薬をつかって様子をみる、外来終了後に往診をする、往診を待たずに病院受診を勧める等があります。多くの医師は外来などほかの業務もあるため、いつでもすぐに往診できる訳ではありません。その為訪問看護師に先に訪問してもらうことも多いです。また、病院受診が必要と判断した場合は、原則的に訪問診療医・看護師が病院を探して情報提供をします。ご家族が病院受診が必要と感じても、一度訪問診療医に相談することをお勧めします。

次回は、胃瘻など医療処置がある場合や在宅看取りの時期にどのような在宅医療を受けられるかをお話します。