若年性認知症の特徴と病気とともに生きる方々の現状(2019年 10月会報より)

2020.01.07会報

山口喜樹認知症介護研究・大府センター
愛知県若年性認知症総合支援センター
山口喜樹

<社会との交わりを続ける>

前回は、一般企業等を退職された後も障害福祉サービスを利用し、就労継続支援事業所などでの就労を続けられる方々のお話をさせていただきました。就労する目的は、単にお金を稼ぐだけではありません。生きがいとしての意味合いも強いと思います。私ども若年性認知症支援コーディネーターをはじめ、ハローワークや障害者就業・生活支援センター、障害者相談支援事業所などの就労支援機関のサポートを受けながら、福祉的就労に生きがいを見つける方々が出てこられました。

アルツハイマー型認知症などの変性疾患は、残念ながら少しずつ進行します。福祉的就労の場でも身体的な介護が必要になってくると、仕事を続けることが難しくなります。社会とかかわりを持ち続けることも難しくなるのでしょうか。

 

「自分たちは孤独だ」「取り残されたような気分になる」と若年性認知症とともに生きる方々はよく口にされます。高齢期の認知症者の数に比べれば、若年性認知症者は圧倒的に少ないです。1/100程度というデータもあります。高齢者同士が集う場は増えてきましたが、若年性認知症の人々が集う場は、あまりありませんでした。同じような境遇の方に出逢いたくてもそうした場がなく、塞ぎ込んで家に閉じこもってしまう方もあります。同じような境遇の方々と思いを共有したいのは、家族も同じことです。

認知症の人と家族の会は、従来からこうした同じ立場の方同士の交流の大切さ(ピアサポート)を説き、愛知県支部では若年性認知症の当事者(本人・家族)が集う場「元気かい」を設けてきました。
その甲斐あってか、県内に若年性認知症の人と家族に特化した交流の場が少しずつ増えてきました。

こうした交流会の多くは、医療機関や介護事業所などで行われてきた病気の予防や介護技術など、専門職によるレクチャーや助言を主とせず、若年性認知症の方とその家族が集まり日頃の話や情報交換などを行う場として設けられています。何よりも当事者同士が楽しく交流することに力を入れています。

「何か学べるのか?」と敬遠される方もおられますが、一度参加してみると「はじめて同じ症状の人に出逢った」と言われる方や「話すことでスッと落ち着いた」と感じる方、中には「勇気づけられた」という方も現れる次第です。専門職からは、教科書的にしか教えてくれなかったことでも、当事者同士で工夫していることなどを情報交換することも有意義だと思います。集いを重ねていくうちに「皆で食事に行こう」だとか「一緒にスポーツをやらないか」など病気のためにしばらく我慢していたことでも、「皆で一緒に叶えてみよう」という積極的な気持ちになる方々も出てきます。

 

こうした集いは、単に自分たちの孤独感の解消などだけではなく、同じような仲間を増やし社会に働きかける活動を行っていくこともあります。「集って楽しい!」に加えて、自らの体験や希望、必要としていることを語り合い、それらを地域に伝えていこうとする活動がはじまっています。当事者が主になって行うだけではなく、それに共感しともに叶えようとする人々も加わり、大きな社会的活動に発展しつつあります。若くして病気になったことを悔やみ、まわりの目を気にして家に閉じこもっているのではなく、仕事や家事以外の新たな役割を見つけた方を目にすると、「自分もやりたい」「きっとできる」と背中を押されて活動をともにする方々が更に増えていくようです。

当事者の交流会は、大きな力を秘めています。少し社会から遠ざかっている方がこの文章をお読みでしたら、一度、参加されてみることをお勧めします。