病院の相談窓口から (2020年 6月会報より)

2020.09.28会報

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
医療福祉相談室(精神保健福祉士)
高見 雅代 

「相談をする」ということについて

皆様こんにちは。今月もよろしくお願いいたします。先回の原稿を読んでくださった方から、励ましのお言葉をいただき、大変うれしく思っております。そして、皆様の最近のご様子をお聞かせいただいて、教わることもたくさんありました。そんな皆様との日々のお話の中で、私が学んできたことを、今月もご紹介していきたいと思います。

今月は少しわき道に逸れて、「相談をする」ことについて、書いてみたいと思います。

私は医療ソーシャルワーカーになって以来、「相談を受け援助を行う」立場で病気に関わってきました。認知症やその他の病気の「患者会」「家族会」には、「専門職」の立場で参加をしてきました。それが最近突然に、認知症を持つ人の家族、および患者の家族となり、医療ソーシャルワーカーや包括支援センターに、「相談をし援助を受ける」立場になりました。「認知症の人と家族の会」には、専門職と家族の二つの立場で所属することになりました。

家族の立場になって以来、いつも不安がつきまとい、一人で考えるとまた不安が襲ってきます。もっと不安な当事者を支えて、自分とその他の家族の日常生活も営み、自分の気持ちはますます余裕がなくなっていきます。仕事での経験で、「病気になったらどんなことがおこるのか」「そうなったらどうしたらよいのか」はわかるのですが、「今どうしたらよいのか」「今これでよいのか」が自分ではわからなくて不安なのです。「それを教えてくれる人が欲しい」と感じました。そして、「だから『認知症の人と家族の会』はあるのか」「だからソーシャルワーカーがいるのか」と、援助者の存在意義を、身をもって知りました。先日、尾之内代表に相談をし、おすすめの交流会の情報を教えていただいた時には、本当に、一つ光が見えた感じがしました。

何年も「相談援助職」と名乗りながら、今更このようなことでお恥ずかしく、そして申し訳ない気持ちですが、専門職として学習と経験を積み、常に心掛けて援助を行っていましたが、知識だったものを「体で知る」体験をして、専門とする「相談」のことを、皆様にお伝えする役割があると感じました。

主治医の先生や看護師さんに勧められて相談室にお越しになる方が、「何を相談したらよいかわからない」「困っていることがわからない」と、おっしゃることがあります。「相談をする」ためには、問題を認識するための知識が必要なのです。最初は誰でも知識や情報はありません。その時の当事者の方に生じるのは「不安」です。その不安を人に伝えることで「困っていること」が見いだされ、情報や解決策の案を手に入れることができます。そして次にその情報や案が知識となり、それを得て問題を解決するための方法を「相談」します。情報は貴重で役に立つものです。多すぎると混乱してしまうこともありますが、その情報をその人にとって有効なものとそうでないものとに整理をする作業のお手伝いするのが「援助者」です。

「不安」を言葉にするのには、エネルギーが必要です。自分が「不安を感じている」ことを認めることも、とても勇気がいります。「上手に言えるか」「ちゃんと受け止めてもらえるか」も気になります。

うまく言えなくてもよいので、自分以外に「誰か」に「話す」ことを、ぜひお勧めします。「誰か」は、日頃から「この人には話せる」という人がいればその人で良いと思います。そんな人がいなければ同じ経験をしたことのある方がおすすめです。周りにそんな方が見つからなければ、「相談員」がいるところでお話しください。「相談すべきこと」は「不安」の中から見つけてくるものです。見つかるまでには、時間と過程が必要です。見つかるまで待たずに、「不安」をお話しにくる目的で「相談」しに来てください。相談援助の専門職であれば、その「不安」から、「今すべきこと」を導き出すことのお手伝いがきっとできるはずです。