病院の相談窓口から (2020年 4月会報より)

2020.07.12会報

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
医療福祉相談室(精神保健福祉士)
高見 雅代 

皆様こんにちは。国立長寿医療研究センターでソーシャルワーカーをしている髙見と申します。この度、貴重な連載の機会をいただきました。つたない内容ですが、病院の相談室から、お役に立てそうなことを発信していきたいと思っております。1年間、よろしくお願いいたします。

はじめに、私の仕事の紹介をいたします。「ソーシャルワーカー」とは、社会福祉学を基盤とした対人援助の専門職の総称で、多くは「社会福祉士」「精神保健福祉士」の資格を持つ人が行います。ソーシャルワーカーは、相談者の生活上の困りごとを解決するために、ご本人だけではなく、ご家族、知人、関連機関や環境にも働きかけます。病院で働くソーシャルワーカーは、「医療ソーシャルワーカー」と呼ばれます。医療が第一義の病院において、社会福祉の専門職のソーシャルワーカーの果たすべき役割は、すべての人の「等しく医療を受ける権利」と「良い生活」を保障するための援助を提供することです。それは「患者」さんが「地域社会での生活者」であるために、医療の専門的なケアを生活に取り入れて、有効に生かしていく援助です。

さて、今回の連載にあたり、尾之内代表から「認知症が重度になってから終末期に至るまでのご本人ご家族の様子や、病院・ソーシャルワーカーとの関わり」とのテーマをいただきました。認知症が重度(後期)になると、認知機能が低下し、見たり聞いたり感じたりするものを正しく認識、表現することが難しくなります。加えて身体機能も低下し、日常生活全般で、他者の手を借りるようになります。この時期には、転びやすくなったり、食べ物が飲み込みづらくなったりしてきます。そのために骨折したり頭を打ったり、また、肺炎になったりして、受診や入院された方とご相談をすることがあります。

それでは、「認知症の終末期」とは、どのような状態をいうのでしょうか?どのように規定されるのかを調べていた時、「ぽ~れぽ~れ」2014年4月から9月号の連載「認知症の人の終末期を考える」を見つけました。そこには認知症の終末期として、食事が食べられなくなったときのことが書かれていました。食べられなくなった原因やその時のご本人の状態によっての、今後の栄養摂取の考え方が、大変わかりやすく書かれています。ぜひご一読されることをお勧めします。

そして、公益財団法人長寿科学振興財団の「健康長寿ネット」に、「認知症の人のエンドオブライフ・ケア」として、「認知症高齢者の苦痛」の記事を見つけました。肺炎に伴う呼吸困難感や吸引による苦痛、食べること・食べられないことによる苦痛、褥瘡による苦痛、孤独感や意思表出が不自由になったことによる苦痛等々。ご本人が苦痛を言葉で伝えることが難しくなっても、このような苦痛を感じていることを知っていると、今後、ご本人に代わって意思決定をする必要が生じた時に、判断材料の一つになるのではないか、と思いました。

この様な時期をどこで迎えるかによって、生活や意思決定を相談する専門職が異なります。たいていは治療で病院に入院した時ではないかと思いますが、入院しながら今後のことをじっくりと考える時間は、なかなか確保しにくいのが現状です。また、ソーシャルワーカーも、病院の機能やその人の専門分野によって、行う業務が異なったりします。

次回より、その時期にどこで誰にどう相談したらよいのかを考えていきたいと思います。私は普段、相談者の方から伺ったお話にお答えすることがほとんどです。そのため自分からどんな話をしようかと考える機会があまりありません(笑)。「認知症の重度から終末期」について、皆様が知りたいことをお聞かせいただけたら、と思っております。長く病院に勤めているので、医療の受け方や先生への相談の仕方、病気と生活のことなどは、いろいろとお話ができるかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。