会報

病院の相談窓口から (2020年 12月会報より)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
医療福祉相談室(精神保健福祉士)
高見 雅代 

終末期の医療と意思決定について

今回は、終末期の課題である①食べられなくなったとき、②病気の治療、③本人の意思確認・意思決定、についてです。

① 食べられなくなったとき

皆さんは「食べられない」状態とはどんな状態を思い浮かべますか?医療者は、大きく二つに分けて評価しています。一つは、嚥下(飲み込む)機能が悪くなったために、食べると誤嚥(食物が誤って喉頭と気管に入ってしまう状態)し、肺炎や窒息の危険がある状態。もう一つは、嚥下機能は保たれていても、ご本人が食べようとしない状態、です。食べようとしない原因は、認知症の進行でいろいろな意欲がなくなってしまった場合や、食事や食べ物を正しく認識することができなくなってしまった場合などを推測します。そうなると、摂れなくなった栄養を食事以外の方法でどう補うかを考えることになります。医師からは、「胃ろう」や「点滴」などの方法があること、それをするとどうなるのかの説明をされます。今は、「胃ろうとは何か」を、本やインターネットなどで容易に知ることができるようになりました。それでも実際に「胃ろうをしている人」に会ったことがなく、「決めろと言われてもどう考えたらよいのか…」と悩まれる方も少なくありません。

② 他の病気の治療

認知症以外に身体の病気の治療を受けている方もいて、継続した治療や、食事や生活習慣の管理が必要な病気もあります。しかし、認知症が進行すると生活管理が難しくなり、食事や栄養摂取に気を配ることがしづらくなります。また治療の中には、苦痛を伴ったり、危険度が高かったりするものもあります。そのような治療を続けるには、本人の理解と協力に加え、それなりの体力、身体機能が必要になります。介護者の方の協力、代行で補うことができないことも出てきます。

③ 本人の意思確認・意思決定

この時期のご本人は、ご自身の状況の判断や、説明の理解、意思の決定、伝達が困難になってきます。その場合には、ご親族が「ご本人に代わって」決定をすることになります(「代理決定者」といいます)「本人の命を私(家族)が決める⁈」「そんな重圧に耐えられない!決められない…」「先生(主治医)が決めてください」
主治医の先生からはじめて終末期であることを告げられた時に、そうおっしゃるご家族は少なくありません。日頃からご本人と話し合われたり、心の準備をしてこられたりする方ばかりではありません。医療者は、その時のご本人に提供可能な医療と提案をし、ご家族が代わりに決定することを、以下のように支援していきます。

まず「ご本人だったら」どうしたいと思うか、をご家族に想像していただきます。また、医療者が一緒に、ご本人に理解できると思われる言葉で意向を尋ねて反応を確認することもあります(手術を受けますか?鼻もしくはおなかにチューブをつけてもいいですか?ごはんを食べたいですか?食べたくないですか?点滴はしてもいいですか?何もしないとだんだん弱ってしまいますね。それも承知しているのですか?など)。反応があいまいでも、「拒否(したくない)」の反応ははっきりと示される方も見られます。

そして、そのご本人のお考え(意思の表明がなかったことも含めて)を踏まえて、ご親族としての決定を支援していきます。

食べられなくなることも、治療が受けにくくなることも、「命に係わる問題」です。その時に、治療の継続か、代替医療(通常医療の代わりに用いられる医療)かを選ぶだけでなく、治療を中止することも含めて、ご本人がどのような状態になっても、自分が受ける医療は自分が選ぶこと(インフォームドコンセント)と、ご家族がそれを実現させるための役割をできる限り果たせるような支援です。

最終回は、実際のご本人、ご家族の方が、どのような決定をどのようにしていかれたかについてお話をしていきます。

寒くなってきましたが、みなさまお体にはお気を付けください。

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